エリコ新聞

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天才の原石「市川春子」

市川春子を読んだ時の衝撃は自分が壊れそうなほどであった。こんなマンガがかける人が現代にいるのか、と思った。砂金のマンガは紋切り型になってしまってあまり手が伸びないという現状だ。だが、市川春子は違う。圧倒的な画力。圧倒的な世界観。デビューからここまで自分の作風が出来上がっている漫画家は類をみない。

虫と歌が初単行本である。市川春子のマンガは人が描かれているが、本当の意味での人ではない。虫だったり、深海生物と同化してみたり、SFチックである。もちろん、SFのマンガはたくさんある。女性漫画家がかいたSF作品も多数あるであろう。しかし、市川春子のマンガは宇宙こそ出てこないものの、現実とは確実に違う世界であり、違う法則で動いている。ひたすら美しく、ひたすら切ない。25時のバカンスは真の兄弟愛をかいた作品だ。幼い頃に傷つけてしまった弟に対する姉の罪悪感。それを意に介さない弟。姉が自らの体を欠損してまで弟に許しを請うのはよんでいて胸が痛む。

しかし、ここまで読者を選ぶマンガが講談社から出ているというのもすごい。掲載誌がアフタヌーンということもあるからだろうか、いい漫画家を発掘したと思う。私は市川春子の短編集がもっと読みたい。この人の頭の中にはまだまだ引き出しがたくさんあるはずだ。短編をかける漫画家ほど才能のある漫画家である。

私は市川春子の最新刊を待っていた。私は雑誌を買わない悪い消費者である。新しい単行本は連載作品だった。

連載を持てるというのは漫画家にとって雑誌に認められたということなのでとても嬉しい。

宝石の国はすでに人が出てこない。人の形をした宝石である。しかし、私はこの宝石の国に少し飽き始めている。自分のマンガを読む目がダメになったのか。それとも市川春子は連載向きではないのか。編集者があまりよくないのか、さっぱりわからない。しかし、最後まで読みたい。最新刊がでればすぐに買いに行っている。完結したら一気に読破しようと思う。

市川春子の作品を読んでいると現代の高野文子のような気がするのだ。高野文子がマンガを仕事にしたらこうなっていたのではないかと想像したりする。短編集を読んで私はそう感じた。

宝石の国が終わったら漫画家「市川春子」完成されるのかもしれない。