日本で唯一のバンドデシネ。宮崎駿の「シュナの旅」
シュナの旅は宮崎駿によるオールカラーのマンガ作品である。私が初めて本屋さんで注文したマンガである。
初めて読んだ時、全ページオールカラーという豪華さもあるが、不思議なものを感じていた。擬音は日本語でない。作中の表現なのであえてこの作品でしかでてこない言葉を使ったのだろう。そして吹き出しの形である。どれも正方形の形をしている。日本のマンガは長い縦の吹き出しが多い。それは日本語に合わせてあるからであろう。
シュナの旅は一国の王子が国のために旅立つシーンから始まる。奴隷の姉妹を助け、禁断の地に足を踏み入れる。グール(人食い)も現れる。ドキドキする冒険の話でもあるし、旅から帰ってきた後半シーンは人の温かさが描かれる。
私は子供の頃からなんどもこの作品を読んでいた。
大人になってからバンドデシネの存在を知った。海外のマンガであり、フランスの方のマンガである。なぜバンドデシネを知ったのかといえば「メビウス」が亡くなったのをネットのニュースで知った時である。私はそれまでバンドデシネもしらないし、メビウスがいかに偉大な作家であるかを知らなかった。
メビウスの作品を本屋さんで何冊か買った。圧倒的な画力。不可解なストーリー。やはりと言っていいのか、メビウスのファンの日本漫画家は多い。そして、宮崎駿もメビウスのファンだと知った。
私はシュナの旅を改めて読み返した。何十年かぶりに読むシュナの旅。読むと「おや?」という箇所が多いのに気がつく。舐めるように読んでから「これはそのまま横書きの文字を入れることができる」のに気がつく。吹き出しは真四角なので横文字を入れることができる。擬音は日本語でないので、全世界に通じる。
バンドデシネに詳しくない私がこの作品をバンドデシネというのはおかしいかもしれない。しかし、文字さえ変えればバンドデシネにできるこのマンガは特別な作品である。