エリコ新聞

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現代に残された最後の良心。武富健治の「鈴木先生」

鈴木先生」タイトルだけ見るとなんとも古めかしい。そして絵柄も古めかしい。しかし、この漫画には、今の日本に失われた「良心」が描かれている。

主人公は中学校の教師である。当たり前だが生徒は中学生だ。

第一話は「げりみそ」である。なかなかインパクトのあるタイトルだ。心地いいとは言い難い。

ある生徒がカレーを食べる時に「げりみそ」という。もちろん他の生徒は不快だ。食欲がなくなる。この「問題行動」を解決するために鈴木先生はいろいろ考えて手を打つ。

「問題行動を起こす生徒ではなかったのに、なにが起こったのか。違う席にすればよいのか。」

そうやって思案していくうちに、答えにたどり着く。

生徒が起こす「問題行動」にはきちんと意味があり、逆に問題行動を引き起こす周囲に問題がある。これは倫理の問題であり、作法の問題であり、人間としての礼儀の問題である。

人と食事をする時、相手を不快にさせないで食事ができる人が日本にどれくらいいるだろうか。

鈴木先生はかなり突っ込んだ内容を描く。中学生と小学生の恋愛とセックスについて描く。学校にバタフライナイフを持ってくる生徒についても描く。描きにくいことを真っ向から描く。

現代の中学校で起こる様々な「問題」は他人事でなく、大人の私たちにも生き方を問うてくる。実際、教師の性についても描かれている。中学校の先生だって人間である。性欲はある。風俗を利用する人だっている。

心がひしゃげた時に「鈴木先生」を読むといい。主人公の先生が「鈴木」というありがちな苗字なのも嬉しく感じる。この漫画を読むと、自分の中に「倫理観」がきちんと備わる。自分が起こす些細な行動にも気を配らなければいけないとひしひし思う。