エリコ新聞

小林エリコのブログです。

週末、友人宅で

私には同じ名前の友人がいる。えりこちゃんは結婚して子供が二人いる。

木曜日にえりこちゃんの家にお泊まりに行くことになり、私は張り切っていた。子供たちとゲームをするために、任天堂Switchのコントローラーと新しいゲームソフトを買った。子供の頃、ゲームをしてくれる相手は兄くらいしかいなかったので多人数プレイに憧れていたのだ。

木曜日は仕事が多く、一日中、同じ作業をずっと続けていて、目がチカチカして、肩が凝り、心がすさんできていたが、今日は仕事が終わったら子供と遊ぶのだ、と自分を励ました。

17時に退勤して、まっすぐ友人の家に向かう。手土産にお菓子などを買って行くべきかと迷うが、その時間が惜しい。子供に癒されたい。そして、世の中の大人たちはこんな幸せな気持ちで帰宅しているのかと羨ましくなる。誰かが待つ家があると言うのはこんなに素敵なことなのか。

雪がそぼ降る中、マンションのチャイムを押す。中に入ると、子供達がお風呂から出たばかりだ。えりこちゃんが今日のために早めにお風呂に入れてくれていた。

「エリコセンパイ!」子供たちが笑顔で駆け寄ってくる。私は顔をほころばせて「久しぶり!」と言ってギュッと体を抱きしめる。ドライヤーを手に取り、子供達の髪を乾かす。子供の髪は細くてサラサラしている。まだ、たくさんの太陽の日も浴びず、砂を孕んだこともない、真新しい髪の毛。

二人の子供の髪の毛を乾かすとゲームソフトをつけた。息子くんの方はゲームに興味津々で、Switchのコントローラーをいじり倒している。「僕、青を使う!」と宣言している。

子供達にゲームをさせている間に私もお風呂をいただく。お風呂から上がるとえりこちゃんが夕飯の準備をすませていた。白菜と豚肉のミルフィーユ鍋。カプレーゼ。子供達と食卓を囲み、箸を動かす。私は思わず、「幸せだなあ」と漏らしてしまう。ビールを飲んでいると息子くんが「エリコセンパイ、お父さんみたい」と言った。そうだね、お父さんみたいだ。私、こんな子供を持つ、お父さんになりたいよ。今日、えりこちゃんの旦那さんは出張に行っている。今日だけ、私がお父さんの代わりだ。

いつも、家でご飯を食べているときは、一人のせいか、あっという間にガツガツ食べてしまうのだが、子供達を眺めてえりこちゃんと話をしながら食べていると、ゆっくりと食事を取ることができた。私はニコニコしながら「美味しいね。お母さんが優しくてよかったね」と子供たちに言った。

子供たちにとっては、これが当たり前の情景で、他の家庭を知ることはないから、自分の家庭が良い家庭かどうかはわからない。でも、大人になったとき、良い家庭だったと思うだろう。綺麗に片付いた部屋とセンスのいい家具に囲まれた部屋には幸せしかなかった。

食事をとった後、みんなでゲームをやる。新しく買ったボンバーマンはルールが難しくて、うまくできなかったので、マリオカートをやることにした。みんなでゲームをするという目標が達成できて、私は始終嬉しかった。

子供達が「エリコセンパイと寝たい」と言うので、一緒に寝ることにした。娘ちゃんはコテっと寝てしまったのだが、息子くんの方ははしゃいでしまってなかなか寝ない。

私の耳元で「エリコセンパイ、好きな男の人いないの?」と聞いてくる。無邪気だ。ずっとはしゃいでいるのが、隣の部屋まで聞こえたのか、えりこちゃんが「早く寝なさい!」と入ってきた。息子くんはひゅっと布団をかぶって眠ってしまった。

二人が眠ったのをよく確認してそっと抜け出す。えりこちゃんは起きていて、「センパイ、眠らなかったの?」と聞いてきた。「薬を飲んでいないから、眠れないよ」と私は答える。

二人でおしゃべりをした。子供達の前では話せないことをたくさん話した。私から見たら幸せなえりこちゃんも生活にたくさんの悩みがある。日々、家事をして、それを誰にも感謝されない生活は辛いだろう。子供達の幼稚園の行事はたくさんあり、息をつく間もない。おしゃべりをしながら、お互いの生活を労いあった。女の私たちは、いま、全く違う人生を歩いている。完全に理解をすることはできないけれど、苦悩を想像して、時々、歩み寄り、励まし合いながら生きて行きたい。