エリコ新聞

小林エリコのブログです。

新作が永遠に読めない漫画家「華倫変」

華倫変は「かりんぺん」と読む。日本人なのか、男なのか女なのかさっぱりわからない名前だ。そして「カリクラ」というタイトルも謎だ。タイトルの由来は「華倫変クラブ」の略らしい。

内容は説明しがたい。なにしろ、いままで読んだことがない漫画だからだ。山本直樹に似ている感じがするがちょっと違う。出てくる女の子は山本直樹の描く女の子よりもっと底にいる。

「ピンクの液体」という作品がある。主人公の女の子は23歳で援交をしている。援交は女子高生がするものであった。しかし、主人公の女の子は安いバイトが嫌になり、高校の制服をきて援交をはじめる。23歳で高校生のふりをして性を売るというくだりだけでもつらく感じるが、主人公は全くつらそうではない。ただ、その日を生き、体を売る。

華倫変が描く女の子は全て「諦めている」のである。生きること、稼ぐこと、幸せになること。

全てを諦めて、それでも死ねず、生き続けなければならない。しかし生き続けなければいけないことに対して怒ったりするわけでもない。男性からあらゆる侮蔑の言葉や暴力を受けようとヘラヘラ笑い全てを許す。

しかし、怒りをあらわにする作品もある。

どの話だったか忘れたが、酒を飲んだ女の子がただクダを巻いている話だった。酒を飲んでふらついて見知らぬ男に無理やり犯されたりする。怒ったりしない。ただ、つらい現実から逃げるために酒を飲む。

「生きているだけでめんどくさいのに!酒くらい飲ませろ!」

みたいなセリフをはいていた。

私も一緒の気持ちだ。本当に生きるのはめんどくさい。そのめんどくささと生きることのけだるさ、生への諦観。

私はこの漫画家は大物になると思って新刊が出たら買っていた。

デッドトリックも買った。

買った後、家の本棚がいっぱいになっていて、「また後で買い直そう」と思って一旦手放した。その後、亡くなった。まだ20代である。そして、その作風から自殺ではないかと疑ったが、心不全かなにかで自殺ではなかった。ただ、突然死んだ。

私はとても悲しかった。これだけの才能をもつ漫画家がなぜ死ななければならないのか。もっと生きて漫画をかき続けなければいけない人間だった。

私の手元にあるのはヤンマガ時代の「カリクラ」上下巻と「高速回線は光うさぎの夢をみるか」しかない。カリクラは太田出版から未収録作品が含まれた単行本が出されたのだが、なぜだか買えないでいる。