エリコ新聞

小林エリコのブログです。

晴れた日は学校を休んで

高校生の私は泣いてばかりいた。うつ病によるものもあったのだと思う。しかし、行きたい進路を親に反対され、目指していたものを目指せなくなった私は自分の将来が描けなくなっていた。目指していたのは「美大に行く」ただそれだけだったのだけれど、普通の科目とは違うため親の反対は激しかった。アトリエに通って絵の練習をしたかったが、一切することはなかった。画力も上がらず、やりたいことがやれないストレスで頭はおかしくなっていた。

私は授業が始まると腕に頭を乗せて、目を閉じた。閉じた瞼からうっすらと涙がこぼれる。制服の黒いジャケットが濡れてより色を濃くした。声は出さないように細心の注意を払った。クラスメイトが勉学に勤しんだり、小さな手紙を回して暇を潰したりしている平和な教室で私は将来が見えなくて泣いていた。

高校には友達はいなかった。中学の時に仲の良かった子が一人いて、同じ高校に通ったのだけれど、あっけなく新しい友達に夢中になってしまって、私は捨てられた。クラスの中では一応、グループに入っていたけれど、私は彼女たちに心を開いていなかった。

あの高校に私の本心を知っている人は一人もいなかった。私はこの場所に1秒でも長くいたくなかった。

学校を休もうと決めた日はいつも通りに起きて、母が作ったお弁当をカバンに入れた。私服は前日にスポーツバックに入れておいた。

駅に向かい、トイレで私服に着替えて、いつと逆方向の電車に乗った。電車は通勤のサラリーマンと学生でいっぱいだった。私はMDウォークマンで好きなロックの曲をかけて目を閉じていた。

終点の上野に着いた。改札を出ると、上野公園に向かう。平日の午前中なのに、人がたくさんいた。私はフラフラと公園を歩いた。日が暖かくて気持ちいい。初夏のせいか少し汗ばむ。私は空いているベンチを見つけて腰をおろした。バックから母が作ったお弁当を取り出す。学校で食べるはずのお弁当を上野公園で食べるのは罪悪感がわく。母のお弁当はいつもと同じように美味しかった。甘い卵焼きを口に運びながら抜けるような青空を見ていると自分の悩みがどうでも良くなってくる。決まらない進路も、上がらない成績も、平和でない自分の家庭も、この青空の彼方においてきてしまいたい。学校では止まらない涙がなぜだか今は出てこない。

明日は学校に行かなきゃなと思って、眩しい光に目を細めた。