エリコ新聞

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失われた倉多江美を求めてー橋本治の「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」ー

橋本治の花咲く乙女たちのキンピラゴボウを読んでいる

私はずーっと「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」を探していた。

一番本を読んでいた学生時代、素晴らしい本があると大学の時先生が教えてくれた。私が通っていた短大ではなぜか漫画の授業があった。

漫画というと誰にでも親しみやすいイメージがあって簡単に受けれそうな気がする。

しかし、この授業はかなりハードであった。なにしろ、受講するのにテストがあった。単位を取るためではない、授業を受けるのにテストがあったのである。

その先生はマスコミ関係の会社を退社したあと、短大で非常勤講師としてやってきた。

私が唯一恩師と仰いでいる先生である。

国沢先生、お元気ですか?

私が一番すきな漫画家は「大島弓子」である。

私は大島弓子をほとんど持っていた。なぜ全部持っていないのかと言えば、大島弓子は全集を出してくれないのである。

だから文庫本や大判でもなんでも集めた。

しかし、全部揃えるのが困難なのである。マスコミにも出ないので、インタビューもほぼない。

それを先生に言ったら「昔の雑誌でインタビュー集があるよ」と言って貸してくれた。

昔の「ぱふ」という雑誌だったと思う。

編集部が大島弓子先生に質問する、という形式であった。

編集部からの問いに「今一番興味があることは?」に「精神分裂病」と答えていたのが印象的だった。

読んだあと、きちんと先生に返した。

先生は「花咲く乙女たちのキンピラゴボウって本知ってる?」と尋ねてきた。

私は正直に「知らないです」と答えた。

先生は「君ならきっと気にいると思うよ」と言った。

貸してもらおうか悩んだが、先生が「きっと気にいる」と言ったのだから、絶対に手元に置いておきたくなる、と思って「古本屋で探します」と答えた。

先生の方から「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ見つかった?」と尋ねられた。

「見つからないです」と答えた。

「見つからなかったら貸すよ」と言ってくれたが、私は断固として借りなかった。

先生が「気にいる」と言った本なのだ。

私はその講義が終わる時まで「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」に出会えなかった。

先生は「僕が持っている本には橋本治の写真が載っているからせめて見せてあげるよ」と言ってくれた。

私は「先生の大切な本なのだから、持ってくる途中で無くしたりしたら申し訳ないのでいいです」と断った。

それからも、私は早稲田通りの古本屋や高円寺の古本屋を探した。

よく行く街の古本屋に入って探した。

運命の本ならきっとめぐり合えると信じていたのである。しかし、「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」に私は出会えなかった。

あれからずいぶんたった。そしたら「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」は再販された。

私は急いでアマゾンで注文した。なにせ私が住んでいる所には本屋がないのである。

確実に手に入れるにはアマゾンしかない。

悲しいがこれが地方の現実である。

前編も後編もイラストが大島弓子である。嬉しくて仕方がない。

私は後編から読んだ。後編の一番最後に大島弓子が紹介されているのである。

サブタイトルは「ハッピーエンドの女王」。

大島弓子が「ハッピーエンドの女王」だと私は信じられなかった。

でも、読んでいるとまぎれもなく大島弓子がハッピーエンドの女王であり、全ての人たちを包み込む大きな愛をもっているのだと知った。

「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」には萩尾望都も紹介されている。

萩尾望都といえば少女漫画界の重鎮である。少女の枠に収まらず、少年漫画にも影響を与えている。

その萩尾望都は前編である。

しかもトップバッターではない。

トップバッターは誰なのか、トップバッターは「倉多江美」である。

名前を見たとき「知らない漫画家だな」と思って読むのをやめた。でも気になって読み始めた。

「失われた水分を求めて」とサブタイトルが付けられている。

プルーストの「失われた時を求めて」から拝借しているのだろう。倉多江美の漫画を読んだことがないのだけれど、橋本治倉多江美論はものすごく面白いのである。

他の漫画家のラインナップは有名どころがならび「山岸凉子」や「陸奥A子」。

なぜか「江口寿史」もいる。江口寿史少年漫画家だけど。

しかし、倉多江美は知らない。誰だ?倉多江美って?私はとりあえずネットで調べた。

そして、アマゾンを見た。でもほとんどない。

読みたいやつがない。

そして、ヤフオクを見た。あった。あったけど、微妙な値段なのである。

古い状態で500円とかだし、全巻セットもない。集めるのに手間がかかりそうだ。

そして、今日はブックオフに言ってきた。

本が好きなくせにブックオフに行くのかよ、と言わないでほしい。

なにせ本屋がないのだ。

大きくて本がたくさんあるのはブックオフしかないのだ。

むしろ、小さな本屋で「倉田江美」の本を注文したら嫌がらると思う。古本しか出回っていないのだから古本屋で買うべきである。

わざわざ電車で大きいブックオフに行った。

探しても見つからない。

白泉社から出ている作品が多いのだが、棚を見ても見つからない。

私は困って店員さんを読んだ。

古本屋で店員さんを呼ぶのもどうかと思うが店員さんは普通に対応してくれた。

電子パッドのようなものであるかどうか調べてもらったけどなかった。

私は落ち込んで帰った。

もう、ヤフオクしかない。確実に買うにはヤフオク以外ないのである。

ヤフオクを久しぶりに覗いたら倉多江美はたくさん出てきた。

私は片っ端から入札アンド即決落札した。あんな遠いブックオフにいって足を痛めて一冊もないってどういうことだよ!!!と怒りながら入札しまくった。

しかし、取引方法をすっかり忘れてしまって一度に大量に注文したためわけがわからなくなった。

頭を冷やそうと思い、ご飯を食べた。

まだ、倉多江美の本は届いていない。

読んでもいない。

しかし、橋本治の文章を読む限りでは倉多江美はなんだか私に似ているのである。

それがすごく気になる。

そして、タイトルの「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」これって水分が足りていないことを意味していると思う。

キンピラゴボウって水分が豊かな食べ物ではない。

倉多江美と水分が欲しい。