エリコ新聞

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子供よ、永遠に子供であれ。小田扉の「団地ともお」

子供だった時を覚えているだろうか。子供のころの感触を覚えているだろうか。夏休みの計画をたて、家族で食事を食べたころを。親に怒られ、兄弟の悪口をいい、家のドアをあけて友達と遊び、夕方に家に帰るあのころを。そんな子供時代を思い出させてくれる漫画が「団地ともお」である。

団地ともお」の主人公、ともおはバカな小学生である。ともおのバカな行動は私たちを笑わせてくれる。夏休みの計画表の円グラフの書き方は大間違いだし、ダンゴムシを瓶に集めたりする。「子供のころ、こんなやつがいた」と思わせるし、ともおの行動を「ありえない」と笑いながら、こんな子供が存在することを否定できないでいる。

団地ともおは面白い。団地という閉鎖的な空間の中で続く日常はだれもが体験したものであり、どの登場人物にも自分を重ねることができる。団地の中には子供だけでなく、お年寄りもいる。ともおやともおの友達はお年寄りや大人と親しい。今の社会にありがちな「他人の壁」がない。

団地ともおがただの子供漫画にならないのは、ともおの父親が単身赴任していることだろう。単身赴任、私はこの感覚がわからない。父親だけが遠くに住んでいるという感覚はわからない。ただ、漫画の中でともおが「とうちゃんー!」と父親と電話するだけで喜ぶ姿や、一年に数回、父親と会えるという時に喜ぶ様を見ると、子供にとって父親が大切な存在だということがひしひしと伝わってくる。そして、ともおの父親は常にシルエットでしか登場しない。

団地ともおはギャグ漫画なのだけれど、時々、人情味溢れる話が出てくる。ともおが見せる友達への優しさを見ると、それは父親不在という環境を耐えて生まれた優しさなのだと思える。