舞台はとある女子校である。
誰にでも少女の時はあった。
少女の怒りや悲しみや戸惑いを描いた桜の園は非常に細やかに感情を描写している。
女の子が女になる時には一種の罪悪感に襲われる。
それは自分の意思と反して成長していく体が、男性にとって性の対象になる体になってしまうということだ。
生理がくるというのは女性の象徴であるし、膨らむ胸は女性のシンボルであろう。
女の体を自分自身が受け入れられないのに、周囲からは「男に気をつけろ」や「成長が早い」など勝手に言われてしまう。
自分で望んでこんな体になったわけではないのに。
胸が大きい子は胸を隠して猫背になる。きつい布を胸に巻くようになる。
否応なく迫ってくる女の世界に戸惑い傷つき、涙する。
まぎれもない少女たちの話。
そういえば、私も猫背だ。
私は身長が他の女の子よりも高い。いつも背の順で並ぶと後ろにいた。男の子に間違えらえる私は、自信のなさからか、身長を低くみせたいからなのか猫背になった。
身長が高いことなど、大した問題ではないと大人になった今なら言えるが、当時の自分にとってはひどくコンプレックスだった。そして、私は身長の割に膨らまない胸にも絶望していた。
そんな悩みも今思い出すと、桜の花びらのようにあっという間に散ってしまっているが、あの満開の桜のような日々は忘れることができないのである。