エリコ新聞

小林エリコのブログです。

映画「セッション」

映画「セッション」を観てきました。なんといっていいのか分からない。ただ、最高の映画だったということだけは確実です。凄まじいまでの狂気。最高の音楽を作り出すための恐ろしいまでのレッスン。この映画を観ていると自分は命がけでこんなに打ち込んだものがあるだろうか、という気持ちが湧いてくる。そして、命がけで教える教師に出会ったことがあるだろうかと思う。

この教師の音楽の教育はいわゆるスパルタ教育だ。スパルタ教育という単語を自分で言うと懐かしい感じがする。スパルタなんてものはとっくの昔になくなってしまった。頑張らなくていい、という思想が蔓延し、みんな凡庸に生きるように育てられた。努力はバカらしく、真面目に生きると損をすると教えられた。

確かに、その理論は正しい。努力をしたってたいして報われないのが世の常である。しかし、努力をしないでいて、最高の音楽を作り出せるだろうか。音楽だけでない、絵画でも学問でも優秀な人に厳しく教えてもらってはじめて才能は開花する。人から能力を引き出すのが教師の仕事である。

スキンヘッドの教師の教育に対する考えは間違っていると心優しい人は思うだろう。でも、私は間違っていないと思う。芸術に対して真摯に向き合っているからだ。

私は本当はみんな厳しい世界を望んでいるのではないかと考えている。セッションの観客はエンドロールが終わるまで動かなかった。私たちはゆるく生きたい、頑張りたくない、と表面では口にするが、本当は命をかけて何かに取り組みたいと思っているのではないか。そうでなかったら、あの映画を最後まで観ないであろう。

ジャズの映画なので映画館で観るのをお勧めします。上映期間が短いので観たい人は早めに観た方がいいです。

セッション公式サイト