エリコ新聞

小林エリコのブログです。

「ぶっころせ!刑法39条ちゃん」の感想

文学フリマという自費出版物の即売会に行ってきました。

お客さんで行くのは初めてでした。友達のミニコミだけ買って帰ろうと思いましたが、見て回っているときに「ぶっころせ!刑法39条ちゃん」という文庫サイズの本を売っている人がいました。

刑法39条には「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減刑する」とあります。

精神病の私は興味を持って文庫本を手に取って眺めていました。萌えなイラストの描かれた本でライトノベルのようでした。

作者なのかどうか分からないけれど、売っている人が「この本はキチガイなら人を殺してもいいという法律を・・・キチガイは・・・キチガイだと・・」となん どもキチガイと繰り返すので少し嫌な気分になりました。自分で自分のことをキチガイと自虐的に言うことはありますが、キチガイか正常かわからない人でしか も他人の口から「キチガイ」という単語を何回も発せられるのはちょっときつかったです。

「私も精神病だけど39条には反対です」といったら「そういう人には是非読んでいただきたいです」と言われたので買いました。

家に帰って手にとってみました。あのキチガイという単語の乱発でちょっと嫌な思いをしたので、少し反発心を持ちながら読みましたが、なんだか面白くてどんどん読み進めてしまいました。読後は単純に「あー、面白かった!」という感想です。

内容はエロいしグロいし使えない単語がバンバン出てきているので今の出版状況ではどこもだせないと思います。でも、「ぶっころせ!刑法39条ちゃん」はそ ういうタブーとされているものを使わなければ出来上がらない物語で、面白半分にキチガイとか39条とかを使っているものではなかったです。それに、作品も 39条に反対している内容なので好感が持てました。

39条は健常者と精神病者の溝を深める法律だと思っています。過去に起こった事件などで精神鑑定で罰せられないことがあると、私は辛くなります。「ああ、また精神病者への差別が深まるだろうな」と。

遺族からしてみれば「気が狂ってれば何をしてもいいのか!?」という気持ちだと思います。同時に私としては、気が狂っていても正しく罰して欲しい。精神病者には罰を受ける権利すらないのか、という気持ちです。

精神病者もきちんと罰を受けるようになれば遺族の怒りも精神病者全体に向けられることはないと思います。

今まで優生保護法などで精神病者パイプカットされたり避妊手術をさせられたり、ロボトミー手術をされたりして、ひたすら権利を奪われてきました。最近よ うやく精神病者の権利が叫ばれるようになってきましたが、健常者と同じ権利を得るなら健常者と同じく罰せられなければいけないと思います。

「ぶっころせ!刑法39条ちゃん」はそのタイトルのとおり「ぶっころせ!刑法39条ちゃん」な内容であって、絶対に普通の流通に乗ることはないけれど楽しく読ませていただきました。